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住まいの訪問記

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2021/05/14

夫婦の歴史を刻む数寄屋造り。

長年の東京暮らしに終止符を打ち、N様ご夫婦が山口に帰ってきたのは、今から28年前。

お二人が故郷の母と暮らすために建てたのは、格式高い床の間を有した数寄屋造りの平屋だった。

美しく磨かれた床や随所に生けられた花たちから、日々を大切に丁寧に送ってきたことがうかがえる。

この家の歴史は、お二人の「第二の人生」の歴史だ。

故郷に帰って家を建てると決めたとき、奥様が熱望したのは憧れの数寄屋造り。

「障子の枠までワックスをかけるの」と、家にたっぷりと愛情をそそぐ。

庭ももちろんしっかりとお手入れ。帰省の度に息子さんが松を褒めるそう。

大工さんを泣かせたという、こだわりの床の間。

湾曲を描いた壁により描かれる、丸みを帯びた影も美しい。

家事の途中の休憩は、庭と畑に面した広縁で。

季節の花を眺めながら、コーヒーを楽しむのが奥様の日課。

高くて広い窓からはたっぷりと陽光が降り注ぐ。

ご主人は囲碁を、奥様は生け花を嗜む。

黙々と碁を打つご主人のすぐそばで、庭から摘んできた花を生ける奥様。

時折とりとめのない会話をし、にこりと顔を見合わせるのが二人流の過ごし方。

時を重ねて味わい深くなった竹垣は、日本の心「わび・さび」を感じさせる。

庭にはこの竹垣や手水鉢、家の中には香炉や奥様による墨絵など、お気に入りがさりげなく配されている。

N様邸 1993年竣工